薬膳を深く理解し実践していくには、まず「陰陽五行」の考え方を知ることが大切です。
この動画では、陰陽五行思想の起源として、易経、陰陽学説、五行学説、そして医学へどのように応用していったのかを、YouTubeで公開しています。
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以下に、文字おこし(テキスト)も掲載しますので、どうぞご利用ください。
第一章「陰陽五行の起源」
ナレーション
この世界は、ひとつでは存在できない。
光があれば、影がある。
昼があれば、夜がある。
満ちるものがあれば、欠けるものがある。私たちは、気づかないまま、対になる世界の中で生きている。
それを言葉にした思想がある。「陰陽」
そして、その陰陽から生まれた、もうひとつの法則「陰陽五行」これは、自然と、人間と、宇宙をつなぐ、ひとつの“理(ことわり)”である。
陰陽の体感
朝と夜。夏と冬。静けさと、躍動。世界は、ひとつの性質だけでは成立しない。
もし、昼だけの世界があったら。もし、ずっと夏が続いたら。命は、すぐにバランスを失うだろう。古代の人々は、この自然現象に、深い意味を見出した。すべての存在は、互いに補い合う“二つの力”によって成り立っている。それが、陰と陽。
この思想はどこから生まれたのか。それは哲学ではなく、徹底した観察から始まった。古代の人々は、自然を見続けた。草木の成長。寒さと暑さの移り変わり。
春に種をまき、夏に育ち、秋に収穫し、冬に蓄える。この循環は、偶然ではない。そこには、必ず繰り返される法則がある。人は、それを理解しなければ生きていけなかった。その法則を、体系としてまとめたものが易経である。
易経 → 陰陽 → 五行 → 医療(中医学)への流れ
易経
「易」という字は、“日”と“月”から成る。太陽と太陰。すなわち、陰と陽。
そして易には、三つの意味がある。
変易。万物は、常に変化し続ける。
不易。その変化の中にも、変わらない法則がある。
易簡。その法則は、とてもシンプルである。複雑に見える世界も、根本は単純な原理で動いている。
易経の「経」とは、道や理のことである。天の理と、人の道を示す書物を「経」とよぶ。易経とは、世界の仕組みを読み解くための書であり、中国文明の世界観と法則論の基礎となった。
伝説の帝王「伏犠」
はるか太古。伏犠と呼ばれる、伝説の帝王がいた。
彼は問い続けていた。なぜ、万物は絶えず変化し続けるのか。この世界は、どのような法則に従っているのか。伏犠は、空を見上げ、大地を見つめ、自然を観察し続けた。
圭表―(日時計)を用いて、影の長さから時間と季節を読み取る。
最も影が長い日を、冬至。最も短い日を、夏至。
さらに、太陽の動きから東と西を知り、正午の影から南を、北極星から北を定め、こうして、方位が生まれた。そして四季が定まり、やがて二十四節気という、精緻な時間の体系が築かれていく。
春に種をまき、夏に成長し、秋に収穫し、冬に蓄える。人は、この自然のリズムに従うことで、生きる術を得た。
伏犠は観察を重ねた末に、ひとつの原理にたどり着く。
それが陰と陽の法則。すべての変化は、陰と陽の相互作用によって生まれている。
夏至には、陽が極まり、陰が生まれる。
冬至には、陰が極まり、陽が生まれる。
この循環こそが、自然界のリズムであり、その関係を象徴したものが、陰陽太極図である。
そしてこの思想は、さらに発展していく。陰陽という二つの原理に、木・火・土・金・水という五つの性質を組み合わせたもの五行。陰陽と五行が結びつくことで、自然のあらゆる現象は、より具体的に説明されるようになった。
医学への応用
季節、気候、そして人間の仕組みにも応用された。人は自然の一部であり、自然の影響を受けて生きている。この考え方から、陰陽の法則は人体へと応用されていく。
体の外側は陽、内側は陰。背は陽、腹は陰。さらに内臓においては、六腑が陽、五臓が陰とされた。
それは、単なる分類ではない。病の深さ、すなわち体のどこまで影響が及んでいるかを見極めるための指標でもあった。
また、人体にも“太極”があると考えられた。両腎は、陰と陽の根源として、背骨を挟み、対をなして存在する。腎は、生命の源。それはまさに、人体における陰陽の中心である。
このようにして、自然の観察から生まれた陰陽の思想は、やがて人体を理解するための理論へと発展し、中医学という医療体系の基礎となった。そしてそこに、五行の概念が加わることで、身体の働きや、臓器の関係性、さらには感情や季節とのつながりまでもが、ひとつの体系として結びついていく。
陰陽五行。それは、自然と人間を分けるのではなく、ひとつの流れとして捉える思想である。その起源は、この「易」から始まっている。そしてそれは今もなお、医療や養生の中に生き続けている。
薬膳は、中医学の基本となる「陰陽五行」の考え方をもとに、季節の移り変わり、個々の体質に寄り添ったレシピをつくる。それにより、自然と調和しながら、心身ともに健やかな状態を保つことを目的とする。そのため、薬膳を深く理解し実践していくには、まず「陰陽五行」の考え方を知ることが大切である。
次回は、陰陽学説の世界観を解説します。
