薬膳効果
体力向上、美肌

豚肉の薬膳効能|潤いと気血を補う食材。疲労・貧血・乾燥対策にも

豚肉は、中国では「猪肉(ちょにく)」と呼ばれ、古代から滋養食として親しまれてきました。養豚の歴史は、新石器時代に農耕が始まった頃までさかのぼるといわれています。日本でも弥生時代には養豚が始まっていましたが、本格的に広まったのは明治時代以降です。

中国では脂肪の多い品種、ヨーロッパでは脂肪の少ない品種へと改良され、それぞれ異なる食文化を形成してきました。
薬膳では、豚肉は単なるタンパク源ではなく、「体を潤し、消耗した気血を補う食材」として扱われます。

豚肉の薬膳効能は「滋陰潤燥・補腎・益気血」

豚肉の主な薬膳効能は以下のとおり。

滋陰潤燥(体を潤し回復させる)
体内の潤いが不足すると、喉の乾き、肌の乾燥、空咳、便秘などが起こりやすくなります。豚肉は、こうした「陰虚(いんきょ)」の状態を補い、体を内側からしっとり潤します。特に、長時間働いて消耗している人、夜更かしが多い人、更年期世代にも向く食材です。

補腎
薬膳でいう「腎」は、生命力や老化、生殖、成長を司る重要な働きです。豚肉は腎を補うことで、加齢による体力低下、足腰のだるさ、耳鳴り、慢性的な疲労感を支えると考えられています。

益気血
気と血を補い、エネルギー不足や貧血傾向を改善する働きです。疲れやすい、立ちくらみがある、顔色が悪い、産後で消耗している人にも向きます。

部位によって異なる豚肉の薬膳的特徴

豚肉には、肩ロース、ロース、ヒレ、バラ、スペアリブなど様々な部位があります。薬膳では、中国名の「猪肉」は基本的に赤身肉を指します。赤身は特に「気血を補う」働きが強いとされます。

一方、脂肪の多い部位は潤いを補う力が強く、皮つき肉は美容や乾燥対策にも用いられます。骨付き肉は、骨の滋養を補う意味合いも加わります。

赤身肉 → 疲労回復・貧血・気血不足
脂身 → 乾燥対策・潤い補給
骨付き肉 → 滋養強壮

というように、体調に応じて使い分けられてきました。


中医営養学

イノシシ科イノシシ属
甘鹹/平
性味
脾、胃、腎
帰経
滋陰潤燥、補腎、益気血
効能
陰虚証、腎気虚証、虚弱体質
適応

豚の皮

ブタ・カワ
甘/涼
性味
肺、腎
帰経
清熱養陰、除煩、潤膚
効能

本草綱目

猪肉:酸/冷
狂病の久しく癒えぬのを療す
補腎気虚証

代表実例「豚肉」

豚肉は「潤い」と「回復力」を支える薬膳食材

現代は、睡眠不足やストレス、長時間労働によって「潤い不足」の人が増えています。そんな時、脂を落としすぎず、じっくり煮込んだ豚肉料理は、体を静かに回復させる薬膳になります。忙しい日ほど、豚肉のスープやお粥のような“柔らかい滋養”を、日々の食卓に取り入れてみるのもよいでしょう。

貧血・疲労感・母乳不足に「当帰痩肉湯」

薬膳書『食療本草学』には、豚肉の赤身500gと当帰30gを煮込む「当帰痩肉湯(とうきそうにくとう)」が紹介されています。

これは、気血不足による、貧血、めまい、疲労感、産後の母乳不足などに使われてきた薬膳料理です。当帰は「女性の人参」とも呼ばれる生薬で、血を補い巡らせる働きがあります。豚肉と組み合わせることで、消耗した体を穏やかに養います。

手軽に作るなら、豚肉を生姜やネギと一緒に煮込むだけでも十分です。さらに、ネギの代わりに奈良県・大和地方で古くから栽培されてきたセリ科の薬草「ヤマトトウキ」の葉を使うと、より薬膳らしい香りと作用が加わります。

むくみや水分代謝の低下には「猪肉湯」

水分代謝が悪く、むくみやだるさが続く場合には、『食医心鏡』に記載されている「猪肉湯(ちょにくとう)」があります。
これは、豚肉と米を一緒に炊いて作るお粥です。

米には胃腸を整え、水分代謝を支える働きがあります。豚肉の滋養作用と合わさることで、胃腸が弱って水はけが悪くなっている状態を穏やかに整えます。特に、疲労感を伴うむくみ、食欲低下、胃腸虚弱の人に向く食養生です。

老人の不眠や体力低下には、豚肉と山芋のスープ

体力不足による不眠には、豚肉・山芋・クコの実を弱火でじっくり煮込んだスープが適しています。山芋は胃腸を補い、クコの実は肝と腎を養い目や疲労感を支えます。豚肉の潤いと気血を補う働きと合わさることで、消耗した体をゆっくり回復させていきます。

薬膳では、眠れない原因にも種類があると考えます。
体力が落ち、血や潤いが不足して眠れない場合には、こうした滋養のあるスープが向きます。一方で、ストレスや食べすぎによる胃の不調からくる寝苦しさには適しません。