5.潤す

杏子(アンズ・アプリコット)

薬膳効果
美肌、便秘解消

あんず(杏・アプリコット)の効能とは?咳や便秘、美容にうれしい初夏の果実

あんず(杏・アプリコット)は、初夏に出回る甘酸っぱい果物です。栄養が豊富な果物として知られるあんずですが、薬膳では古くから体を潤す食材として重宝されてきました。
とくに咳や喉の乾燥をやわらげる働きがあるとされ、乾いた咳が出やすいときや、肌や体の乾燥が気になるときに食べたい食材のひとつです。

さらに杏は美容食としても古くから重宝されてきました。中国・唐の時代には、美貌で知られる楊貴妃が好んで食べていた果物としても伝えられています。

潤いを与える「潤肺」の働き

杏子が持つ「潤肺(じゅんぱい)」の作用は、薬膳の重要な概念のひとつです。「肺」は薬膳において「乾燥に弱い」とされており、空気の乾燥や寒さの影響で機能が低下しやすくなります。肺が乾燥すると、乾いた咳、乾燥肌、便秘などの症状が現れやすくなります。

杏は体の潤いのもととなる「陰液」を補い、体の中に潤いを巡らせることで、肺を乾燥から守る働きがあると考えられています。そのため薬膳では、咳にいい食べ物や乾燥対策の食材として利用されてきました。
また杏の種である杏仁は、咳を鎮める生薬としても知られ、デザートの杏仁豆腐の香りのもとにもなっています。

楊貴妃の美肌を支えた宮廷の杏子

楊貴妃が暮らした唐代は、薬膳や美容に対する意識が非常に高かった時代でした。この時期、杏子は単なる食材にとどまらず、美容や健康維持のために利用されていました。

楊貴妃の美貌を支えた要因の一つに、宮廷で提供されていた薬膳や美容食があるとされています。杏子の持つ美肌効果、潤肺作用、そして滋陰の効果は、楊貴妃の健康や美しさを保つために重要な役割を果たしていたと考えられています。実際、楊貴妃は杏子を日常的に摂取していたと伝えられており、乾燥から肌を守り、健康的な外見を保つために効果的だったとされています。

あんずは便秘にもよい?薬膳で考える腸を潤す働き

あんずは薬膳では「潤腸」の働きを持つ食材。これは腸を潤し、便通を整える作用のことです。肺と大腸は薬膳では密接な関係があると考えられており、肺を潤す食材は腸の乾燥にも役立つとされています。

また、あんずに含まれる食物繊維も便通を整える働きがあります。特にドライアプリコットは食物繊維が多く、手軽に取り入れやすい食品です。
乾燥による便秘が気になるときには、あんずをヨーグルトなどと合わせて食べるのもおすすめです。

中医営養学

バラ科サクラ属
甘酸/温
性味
肺、大腸
帰経
潤肺定端、生津止渇
効能
から咳、便秘、口の渇き
適応

本草綱目

酸/熱 小毒 生食:傷筋骨。

杏子の薬膳レシピ

杏子の香りと楊貴妃の美しさ。杏林の伝説を胸に。

初夏の朝、光が少し強くなるころ、杏(あんず)のことを思い出す。あの甘酸っぱい香りは、どこか人をぼんやりとさせる。季節の果物というのは不思議で、味よりも先に物語を連れてくる。

杏の季節になると、私は決まって楊貴妃を思い浮かべる。世界三大美女だとか、王を惑わせた女だとか、いろいろ言われているけれど、私が気になるのは別のところだ。彼女の身体から、ほのかに杏の香りがしたという話である。
杏をよく食べていたから、そんな香りがしたのだとも言われている。真偽なんてどうでもいい。美しい女が杏の香りをまとっていた、というだけで、なんだか納得してしまう。

中国では杏は「杏林」と呼ばれ、昔から養生や医の象徴とされてきた。体に潤いを与え、乾きを和らげる果実。そう思うと、あの甘酸っぱい実の中には、少しだけ美容と健康の物語が詰まっている気もする。

杏子の花

春の花期は、3月~4月で可憐なピンクの花を咲かせ初夏に実をつけます。俳句では「杏の花」が春の季語、「杏」は夏の季語。

あんず(杏・アプリコット)|ちょっと大人の薬膳レシピ

杏は、そのまま食べるだけでなく、日常の食事にも取り入れやすい果物です。体の潤いを補う食材と組み合わせると、薬膳としての働きも高まります。

楊貴妃の杏露(きょうろ)|杏と白きくらげの潤い薬膳デザート

初夏の夜、冷たい器にそっと盛られた杏の甘露。潤いをたたえたその甘味は、唐の宮廷で愛された養生の味だったのかもしれません。
杏のやさしい甘酸っぱさと、白きくらげのとろりとした食感。体を内側から潤す、静かな薬膳デザートです。

材料(2人分)
杏 6個
白きくらげ 5g
はちみつ 大さじ2
氷砂糖 10g
水 300ml
クコの実 少々

作り方
1 白きくらげを水で戻し、小さくちぎる。
2 鍋に水と白きくらげを入れて15分ほど弱火で煮る。
3 半分に切った杏を入れ、さらに5分煮る。
4 はちみつと氷砂糖を加える。
5 器に盛り、クコの実を添える。
冷やして食べると、初夏にぴったりの甘味になります。杏・枸杞・白きくらげは“美肌トリオ”です。

薬膳ポイント
杏は「潤肺」の働きがあり、肺の乾燥を防ぎます。白きくらげは体の潤いを補う代表的な薬膳食材。
この組み合わせは、肌の乾燥、喉の乾燥などが気になるときにおすすめです。

杏とはちみつの潤いコンポート

材料
杏 6個
はちみつ 大さじ2
レモン汁 少量
杏を軽く煮るだけのシンプルな薬膳デザート。
はちみつは喉を潤す食材として知られ、杏と合わせることで咳や喉の乾燥対策になります。

杏の薬膳ソーダ

材料
杏コンポート 2個
炭酸水 150ml
はちみつ 少量

初夏の暑い日におすすめの爽やかな一杯。体の熱をやわらげながら、潤いを補います。
初夏の食卓に杏を取り入れると、体の内側に静かな潤いが満ちていくような感覚があります。