5.潤す

奶酪(チーズ)

薬膳効果
美肌、疲労回復

肌と粘膜に潤いを与え、睡眠の質を高める乳製品

肌のかさつきや髪のパサつき、乾燥が気になるとき、意外な食材が心強い味方になってくれることがあります。それが「チーズ」です。
チーズの滋潤性は、体に潤いを与える働きがあります。特に、皮膚の乾燥に深く関わる「肺」と「腸」を潤すことで、内側からしっとりとした美肌や艶やかな髪へと導いてくれます。乾燥が気になる季節には、チーズを食卓に取り入れて、体の内側から潤いを育んでみてはいかがでしょうか。

睡眠の質を整える効果あり

薬膳では、チーズは「滋陰(じいん)」と呼ばれる、体の潤いを補う食材に分類されます。特に、加齢によって不足しがちな「陰液(いんえき)」を補うのに役立つとされています。
陰液とは、血のもとになったり、体液など体を潤す要素のことで、これが不足すると、乾燥だけでなく、眠りが浅いなどの不調も現れやすくなります。チーズをそのまま食べるのはもちろん、ハチミツやナッツと合わせると、陰液を増やす効果がさらに高まります。

乾燥地帯の乳製品文化

世界をみると乾燥地帯の住人が乳加工の文化を育ててきた歴史があります。乾燥地帯の気候は、湿度が低く、風が強いことが多いため、皮膚や粘膜が乾燥しやすくなります。こうした環境では、体内の「陰液」を消耗しやすく、肌のかさつきや喉の渇きが日常的な悩みになりがちです。そのため、現地の人々は自然と体を潤す食材を取り入れ、チーズやバターなどの乳製品が重要な栄養源となったようです。

中医営養学

乳製品
甘酸/平
性味
肺、肝、脾
帰経
補肺潤腸、滋陰止渇
効能
陰虚証、皮膚乾燥、便秘
適応

早わかり薬膳素材

甘酸/平 肺肝脾、養陰補肺、潤腸通便
応用:微熱、口渇き、皮膚のかゆみ、腸燥便秘

食エッセイ「チーズ」

潤いの記憶「カマンベールと蘇の物語」

ふと、冷蔵庫の片隅にあった小さなカマンベールを思い出した。白ワインのつまみに買ったはずのそれが、なぜか今は妙に艶やかに見える。チーズのしっとりとした質感が、かさつく肌に効きそうな気がしたのだ。

古代の日本でも、乳製品は体を潤す妙薬だったらしい。飛鳥時代には「酥(そ)」と呼ばれるバターのようなものが貴族の間で重宝され、五臓を助ける薬として扱われていたという。遠い昔の日本の空にも、乳の香ばしさが漂っていたのかもしれない。

きっと当時の人々も、乾燥に悩む肌や、疲れ果てた心に、その芳醇な香りと濃厚なコクを沁み渡らせていたのだろう。カマンベールの白い肌をナイフで割ると、ゆっくりととろけるクリームが顔をのぞかせる。遠い昔の蘇に思いを馳せながら、私はその一口を、じんわりと白ワインとともに味わった。

チーズ、白ワイン、葡萄、どれも潤いをもたらす効果あり。