香薬の効能|気を調える漢方のアロマテラピー

香りは気に働きかける

古来より芳しい香りを放つ薬は芳香治療薬として使われてきました。また香りのある植物(医薬、食材)は「気」によく働きかけます。

例えばバラ、ジャスミンを使った花茶などは、通りの鈍い気を通じさせます。柑橘系フルーツ、茗荷、セロリ、カルダモンなどの香りが強い食材も気を調え、薬膳では「理気」すなわち気を調える食材として分類します。また漢方では「香」の字をもつ生薬の木香・丁香・沈香・茴香は気をめぐらす「行気薬」として用いられます。
目には見えない香りの力は、目には見えない気に働きかける。これらの芳香性の植物たちは香薬と称し医香同源の由縁はここにあります。



気とはなんでしょうか?

東洋医学では「気」は森羅万象は気の変化で物は生じるという思想があります。

気が盛んとなれば物も壮んとなり、気が弱まれば物も衰え、気が調えば物も調和し、気が絶えれば物は死す。

この考えは自然界で生きる私たちにもあてはめられます。
人の気は生命エネルギーであり、人体の組織や器官を温め、働きを推進し、外敵から防御の役目を担います。気が不足した場合は補気の食材から摂取し、気が滞った場合は理気の食材をとるのが薬膳の適切な処方です。

では嗅覚からとりこむ香りに集中して考察するとどうでしょうか?

香薬と機能性フレグランス

香薬とは

香薬は生命エネルギーである気を調え、陽気を助ける事に優れているため漢方スタイルのアロマテラピーともいえるでしょう。
そもそも気の乱れの原因の多くは、精神的なダメージやストレスが加わることで失調し、気分が塞ぐ、気分が悪い、気が逆上するなどの乱れをおこします。この状態を放置してしまうと精神的な気の乱れから、肉体への失調がすすんでしまうので、軽い状態の時に香薬を用いて気を調えることは有効です。

機能性フレグランスとは

一方、近年の香料界隈では、香りは嗜好品として楽しむ香りではなく鎮静(リラックス)覚醒(気分を高める)集中力を高めるなど機能性が期待できる新たな香りの形がみられるようになりました。
これらのカテゴリーは「機能性フレグランス」「ソリューションフレグランス」と呼ばれ臭覚が最も早く脳に到達して感情を左右するなどの特性を意識しています。




香薬は機能性フレグランスと目的は同じですが、香薬は飲む、食べる、吸う、嗅ぐなど用途が広がります。

漢方と香の関係

古来、漢方と香は同じ素材です。
奈良時代に中国・唐の高僧、鑑真和上(がんじんわじょう)がもたらした医学の知識、処方を伝授したことからはじまります。その後に日本独自の漢方医学となり、調合技術は香りを楽しむお香「空薫物(そらたきもの)」
にも取り入れられ「香道」のルーツにもなりました。
鑑真和上の持参目録には沈香、檀香、甲香、甘松、龍脳、安息香、零陵香などがありました。

唐招提寺の鑑真香

奈良に鑑真和上が創建した唐招提寺があります。そこで販売している「鑑真香」の香薬と香りを求めて購入をしてきました。

唐招提寺の鑑真香

鑑真香は漢方素材を中心とした線香ですが、漢方独特の香りというより温かみのある香りでした。また唐招提寺には、蓮の種子を練り込んだ香や、鑑真和上の故郷に咲く名花と言われる瓊花(けいか)を練り込んだ香などありました。

唐招提寺の薬草園

唐招提寺の薬草園の完成は2024年度ですが、現在は一般公開されています。
開園当初は約1400平方メートルでしたが、完成時には約2240平方メートル、薬草や薬木も76種、約6千株になる予定だそうです。興味があればぜひ訪れてみてください。

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