森野旧薬園「万葉まほろば・薬草園でリトリート」

森野旧薬園とは

森野旧薬園は現存する民営薬草園の中では日本最古と言われています。明治以降、西洋医学の普及により漢方が衰退し民間薬草園の多くは消滅しましたが、幕府から譲り受けた薬草の栽培を今も続ける森野旧薬園は貴重な存在です。

森野吉野葛本舗

森野旧薬園は「森野吉野葛本舗」の裏手に広がる傾斜地にあります。奈良宇陀市は飛鳥時代から続く薬草のまちとして知られています。



歴史は日本書記に記された「薬狩りの地」

森野旧薬園は前から訪れたい場所でした。それは日本書記に記された「薬」の狩場。
宇陀が薬草のまちと言われる由縁は、大宇陀地域は宮中行事の薬狩りが行われた日本最古の薬草採取(薬猟・くすりがり)として日本書紀に残されているからです。

葛根、葛粉、薬草を学べる薬園

入園料300円を支払い、中へ入ると目に飛び込むのは、くず粉の精製跡地。
くず粉は、葛の根に含まれる澱粉を極寒期の地下水を使って精製され添加物を一切含まない自然食品です。冬の地下水で葛を精製する工法を吉野晒し(よしのざらし)と呼び「吉野本葛」と呼ばれています。

森野葛本舗の葛精製跡地


葛根(カッコン)

カゼをひいたら葛根湯に配合されている「葛根」の働きは、寒気の邪気をはらい首や肩のコリを解消し、体の免疫を高めて発疹などの病気がこじられるのを防ぐ作用があります。くず粉(葛粉)は葛根のでんぷん粉を精製したものなので薬としての葛根作用はあまり期待できないようです。

幕府から譲り受けた薬草木

徳川吉宗の時代に、幕府から貴重な外国産の薬草の苗や種を与えられ、それを植えたのが旧薬園の始まりです。この時代は薬草の大部分を輸入に頼っていたため幕府が薬草を与え栽培方法を研究させ国内栽培をすすめる目的もあったようです。

幕府下付薬草

「松山本草」全10巻

薬園内にある桃岳庵(とうがくあん)で薬草や昆虫などを掲載した図鑑「松山本草」全10巻をまとめあげ、今でも資料室で大切に保管されています。



命と向き合い体に語りかける薬園でリトリート

つづら折りの階段を上り進めるので歩きやすい靴が最適です。
整地された植物園とは違う、自然のままに生き抜いた薬草を観ることができるので、社会生活からすこし距離を置いて「本来の自分に戻るための時間」を過ごすことができます。

また薬草の知識に触れることで、自分の「内側を整える」術を学ぶことができて、薬草や薬膳が好きな人にはリトリートできる場所。

大宇陀の街並み

大宇陀の街並みを眺める場所もありました。ここではしばらくボンヤリと、日本の風景に見とれていました。
訪れたのは晩秋の平日のため、美しい花や人も少なかったけれど、静まる空気の中で聞こえてくるのは自分の吐息と自然の音。素敵な時間を過ごせました。

森野旧薬園の入園料とアクセス

森野旧薬園は江戸時代初期に創設され、薬草を栽培し、それを用いた薬草の研究を行っていた歴史的な薬園。江戸時代から明治時代にかけて日本の医学や薬学の発展に寄与してきました。機会があれば、ぜひどうぞ。

最寄り駅からの交通
近鉄榛原駅南口→奈良交通バス大宇陀行きで約20分。バス停:大宇陀下車(道の駅)
*榛原駅南口の宇陀市観光案内所ではパンフレットをもらえます。

奈良県宇陀市大宇陀上新1880
入園料300円

森野旧薬園の風景は動画をご覧ください。

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