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鮭(サケ・サーモン)

薬膳効果
胃腸機能の回復、血行促進

鮭(サーモン)の薬膳基本情報

鮭(サーモン)は薬膳において、気血を補い、血の巡りをよくし、脾胃を温める働きを持つ食材で、胃腸機能の回復や血の巡りを促し、体を丈夫にしてくれます。疲労感がとれない、血色不良の人にはおすすめの魚です。

鮭が胃腸を元気にする理由

一般的に魚介類は「寒性」や「涼性」のものが多く、身体を冷やす傾向がありますが、鮭は「温性」の食材です。そして特に脾胃と呼ばれる胃腸系の働きを整えるのに適しており、消化機能の回復を助けてくれます。
なかでも「温中」の効能は、冷えからくる胃腸の不調や、食欲不振、消化不良などをやさしく癒します。

鮭が血行促進に良い理由

鮭は薬膳で「補気補血」の代表的な食材とされており、気(生命エネルギー)と血(栄養と潤い)を補う作用があります。これは、体力の消耗や貧血、疲れやすさ、肌の乾燥、免疫の低下といった「気血不足」の症状に対して、体の内側から力を与えてくれるものです。

気血が増えれば自然と気血の巡りがよくなる体になり、さらに「活血」の働きで血の巡りをもっと改善させます。そのため、冷え性や貧血気味の方、疲れやすい方には心強い食材と言えるでしょう。また病後や産後の回復期にはもちろん、日常の滋養強壮としても非常に優れた食材です。

薬膳サーモンとは?薬膳食材で育つ北海道サーモン

ニュースで「薬膳サーモン」という言葉を耳にし、その響きにひかれて思わず調べてみました。どうやら北海道の清らかな水で育てられた特別なサーモンで、餌にはなんと、丁子(クローブ)や陳皮(みかんの皮を乾燥させたもの)、桂皮(シナモン)、松の実といった、薬膳料理にも用いられる食材が配合されているとのこと。まるで魚に薬膳を施して育てているかのようで、まさに“内側から調える魚”という印象です。

養殖した薬膳サーモンには、尿酸値の抑制効果が報告されているアンセリンが含まれているため、機能性表示食品として販売しており、今後は全国で養殖する方向ですすめられている模様。

気になる味は、飼育時の年間平均水温が約7℃に保たれていることから、サーモンの身はキリッと締まり、脂は程よく、一般的な養殖サーモンに比べて生臭さが少ないのが特徴。薬膳的な効能だけでなく、味わいとしてもクオリティの高い一品のようです。

中医営養学

サケ科サケ属
甘/温
性味
脾、胃
帰経
補気補血、温中理気、活血
効能
気血両虚証、疲労、血色不良
適応

東方栄養新書

甘/温 心肝胃 暖胃和中、老化防止、血行改善

食エッセイ「サーモン」

薬膳は魚の育て方にまで広がっている

薬膳食材を食べて育つ魚。たとえば、クコの実、丁子や桂皮、朝鮮人参、ナツメといった、薬用養命酒のラベルに載っていそうな漢方素材を粉末にして、養殖魚の餌に混ぜて育てるという試み。日本でも始まっているけれど、韓国や中国ではすでに、そんな薬膳魚が研究され、販売されているらしい。
育てる段階から「あなたの健康のために」と意識されている魚。正直、そんな使命感を背負った魚なんて、ちょっと可哀想だなとも思ったけれど、でも同時に、そういう一途さは嫌いじゃない。

薬膳は、本来、特別なものではなく、毎日のごはんを少しだけ意識して選ぶことで、体をいたわり、心をゆるめるための知恵だ。食材の力を借りて、無理なく、ゆっくり調える。それが今、魚の育て方にまで広がっているという事実に、小さな驚きと、ちょっとした感動を覚える。

食べるという行為が、単なる栄養補給ではなく、体や心との静かな対話になっていく。そんな未来が、すぐそばに来ているのかもしれない。

薬膳的に楽しむサーモン寿司

シャリの薬膳アレンジ

〇生姜甘酢シャリのサーモンにぎり
シャリに刻み生姜や生姜酢を混ぜると「冷え対策・胃腸強化」に繋がります。生姜は温中・発汗・解毒の働きがあり、サーモンの脂をスッキリさせてくれます。

〇黒米酢飯のサーモン手まり寿司
黒米入りのもちもちした酢飯をコロンと丸めて、サーモンをのせると「目の疲れ・アンチエイジング」に繋がります。黒米は「補腎」「健脾」「明目」に優れます。

〇クコの実の小さな押し寿司
酢飯に刻んだクコの実を混ぜ込むと見た目もかわいい仕上がりで「目の疲れ・髪つやつや」に繋がります。クコの実は肝腎を補い、目、髪、肌に良い薬膳食材です。

トッピングの薬膳アレンジ

〇炙りサーモン×柚子胡椒のにぎり
柑橘の皮(陳皮)は薬膳で気を巡らせる代表格で「気の巡り促進・ストレス緩和」に繋がります。陳皮がない場合は柚子胡椒で代用し、サーモンの脂にアクセントを。

〇サーモン×アボカドのつまみ
森のバターと呼ばるアボカドは「腸の潤い・美肌」に繋がります。アボカドは腸に潤いを与える働き高め、便通をよくつつお肌にも潤いが届けます。食べる時は、辛味の健胃薬「わさび」を多めにつけると消化促進になり、胃もたれを防ぎます。