5.潤す

干し柿(ホシガキ)

薬膳効果
肺を潤し腸を守る

薬膳効能「干し柿と生柿」の違い

干し柿は渋柿から作られます。干すことで渋味成分のタンニンが他の成分と結合して渋味が感じられなくなり、甘味だけが強く残るドライフルーツになります。

生柿の性質は寒性ですが、干し柿は風通しの良い場所に吊るし天日干しにすることで、水分がほどよく抜けて冷やす性質が穏やかになり平性となります。
どちらも肺を潤し、腸の機能を回復させ下痢を止める働きがあります。

干柿の旬はいつ?

干し柿は渋柿を収穫し、皮を剥き干して作ります。柿の乾燥には天候を判断して11月初旬から採取がはじまり、日が高くなり実の表面の露が乾くのを待って行われます。

柿霜(しそう)

干し柿の表面にできる白粉は「柿霜」と呼ばれ、柿霜にも効能があります。主にブドウ糖と果糖からできているため、味は甘く涼性で喉の渇きを収め、痰を消す働きがあります。
この効能から柿霜を使ったのど飴なども販売されています。

干柿(ほしがき)

柿を乾燥させたもの
甘/平
性味
肺、脾、胃、大腸
帰経
潤肺止渇、渋腸、健脾
効能
から咳、渋り腹
適応

柿霜(しそう)

期待される効果
甘/涼
性味
肺、胃
帰経
清熱生津、潤肺止渇
効能
のどの痛み、口内炎、から咳
適応

食エッセイ「干柿」

太陽の光で変身する柿の姿

柿は大別すると甘柿と渋柿の二つあり、甘柿は木になったまま完熟したのが最高の味ですが、市場にならぶ甘柿も五日、十日と追熟するのを待てば美味しく食べられます。

渋柿は皮をむいて太陽の日にあてながら風を加えれば、真白な粉に覆われた干柿となり茶の湯の菓子として尊ばれます。陽当たりを好む柿は、秋から冬を飾る日本の風物詩。

甘旨みが凝縮している干し柿は、そのまま食べるのが美味しいのですが、薬膳の知恵を加えた茶の時間を過ごすのもよいのではないでしょうか。

干し柿の薬膳レシピ

干し柿は渋柿を乾燥させて保存食として利用する伝統的な技術であり、中国、日本、韓国などの地域でそれぞれ異なる歴史や文化的な背景を持っています。

中国の干し柿「八宝茶」

古代中国では、柿の実を乾燥させて保存食として利用する技術が発展し、栄養価も凝縮され冬の保存食や貴重な食料として重宝されました。また中国の医書や古典にも登場し薬用としても利用され治療にも使われた歴史もあります。

八宝茶(バーバオチャ)
干し柿は八宝茶(バーバオチャ)という中国の伝統的な薬膳茶にもよく使用されます。八宝茶は様々な薬膳素材をブレンドして作られ、干し柿、クコの実、蓮の実、なつめ、菊花、竜眼、氷砂糖などを入れます。干し柿の甘みと栄養が、茶の風味を一層引き立て健康茶として疲労回復を助けたりするために飲まれます。

八宝茶(バーバオチャ)

韓国の干柿「水正果」

韓国でも干柿は伝統的な食べ物として広く知られています。中国から伝わった柿の栽培技術とともに、干柿の製法も韓国に伝わり、古くから冬の保存食として利用されてきました。また韓国の伝統的な食文化に深く根ざしており、特に年末年始や祭礼の際に、供物や贈答品として使用されます。

水正果(スジョンガ)
スジョンガは韓国の伝統的な飲み物で、干し柿、シナモン、生姜、蜂蜜や砂糖で作り、特に冬に好まれる甘くてスパイシーな風味が特徴です。

スジョンガは古くは王族や貴族の間で主に飲まれていました。食後の消化促進や寒い冬に体を温めるために、生姜やシナモンなどの温性食材が使用されることが多いです。

水正果(スジョンガ)

クリームチーズで干し柿を引き立てる

日本でも干し柿は長い歴史を持っており、特に奈良時代(8世紀頃)には既に作られていたとされています。日本の気候は柿の栽培に適しており、古代から多くの地域で栽培され、冬の保存食として重要視されてきました。
平安時代には貴族たちの間で珍重され、また江戸時代には庶民にも広がりました。干し柿は手間をかけて作るため、秋から冬にかけての風物詩とされてきました。

干し柿は工夫次第でさらにおいしく楽しむことができます。特にクリームチーズの相性は抜群で、クリームチーズの濃厚な味わいが、干柿の甘さを引き立てます。
クリームチーズも体を潤す効能があるので、秋冬の乾燥する季節のおつまみに最高な一品となるでしょう。

干し柿とクリームチーズ