5.潤す

柿/柿子(カキ)

薬膳効果
肺を潤し美肌を育てる

薬膳では柿を食べるときは温燥と涼燥を考慮する

柿は9月頃から収穫がはじまります。秋が深まる頃には甘くて果肉がジューシーな「富有柿」「次郎柿」などの人気の品種が市場に出回り、その後もさらに様々な品種の柿が12月頃まで続きます。

秋の乾燥による嫌な症状を和らげる柿の実

柿が実る秋は乾燥の季節であり、乾いた空気は鼻をとおして「肺」を乾燥させます。すると、喉の乾燥、痛み、咳などの症状をおこしやすくなります。
柿の性質は寒性で肺や喉を潤す働きがあり、乾燥による嫌な症状を和らげてくれます。

寒性で清熱し、潤す働きで潤肺する効能により、から咳が続く、いつも身体が熱っぽい、顔が赤い人は小まめに食すことをおすすめします。
一方、冷え性でむくみが気になる人は体内の余分な水分を余計にため込んでしまうので体を温める飲み物またはスパイスを一緒につかうなど少し注意が必要です。

初秋は温燥、晩秋は涼燥

薬膳では初秋は夏の暑さのなごりがある「温燥」と、冬の訪れを感じる「涼燥」の二つにわけて考えます。このことから食べ方にも工夫が必要です。
「温燥」の時期は柿の寒性を利用したデザート。そして「涼燥」の時は寒性を和らげるためにクローブ、シナモン、生姜など、体を温めるスパイスを一緒に使うとよいでしょう。

中医営養学

カキノキ科カキノ属
甘渋/寒
性味
心、肺、胃、大腸
帰経
清熱、潤肺止渇、解酒毒
効能
から咳、口渇、口内炎、酒酔い
適応

新華本草綱要

果実:有清熱、潤肺、止渇、滋陰的効果。
柿葉用途:胃潰瘍出血、肺結核出血

食エッセイ「柿」

残された柿の実「木守りの柿」

ポツンと残されたオレンジ色の柿。秋晴れの青空を見上げた時に、そんな光景を見かけたことはないでしょうか。
これは柿の実を収穫する際、すべての実を採らずに、ひとつふたつの実を木に残しておくという日本の伝統的な風習や習慣で「木守りの柿」と呼ぶそうです。

人間がすべての実を採ってしまうのではなく、木に少し柿の実を残すことで木や自然への感謝の意を表す。そして冬の間に鳥や動物たちが食べるためのものとも考えられている。自然界の他の生き物と分け合い、そして木守りの柿には、自然や木、そして来年の豊作への感謝と祈りが込められています。

柿は神様の食べ物

柿の学名は「Diospyros Kaki」で意味は「神の食物」です。日本では「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われるほどに滋養豊かな果物で、世界に誇れる果実であり「カキ」という名称は海外でも通じる名称です。

柿は木の皇帝

柿は中国では「木の皇帝」と呼ばれ古代から大切にされてきました。
皇帝と呼ばれる由縁は諸説ありますが、柿の木は強く、長生きすることができ、その果実は鮮やかなオレンジ色で美しく、多くの人々に愛されてきたそうです。
皇帝の象徴である強さと美しさが柿の木にも重ねられ「木の皇帝」として称されることになったと考えられます。

柿の種類「甘柿」と「渋柿」

柿は東アジア温帯地域固有の果実で古くから栽培され、中国中南部付近が原産で、そのほとんどが渋柿であり韓国を経て、日本に伝来してきたと言われています。
しかし日本や朝鮮半島にも古くから分布が認められており、縄文時代や弥生時代の遺跡から種が出土しています。
16世紀頃にポルトガル人によってヨーロッパに渡り、その後、アメリカ大陸へ広まっていきました。
柿はもともと渋柿しか存在していなかったところに、突然変異によって不完全甘柿が現れ、その後完全甘柿が出現したと言われています。

現在の柿の種類は「甘柿」と「渋柿」がありますが、もう少し分類すると「完全甘柿」「不完全甘柿」「不完全渋柿」「完全渋柿」の4種類に別れます。

完全甘柿 富有、次郎、御所、伊豆、早秋
不完全甘柿 禅寺丸、西村早生、筆柿
不完全渋柿 会津身不知、甲州蜂屋
完全渋柿 平核無、甲州百目、西条、市田柿