1.温める

肉桂/桂枝/桂皮(シナモン・ニッケイ・ケイシ・ケイヒ)

薬膳効能
冷えと痛みを取り除く

肉桂、桂枝、桂皮、シナモンの効能の違い

一般的に主に樹齢10年以上のケイから採取した幹の皮の部分が「肉桂」「桂皮」、外皮をとったものを「桂心」、若枝の部分を「桂枝」と呼びます。これらのケイの樹皮、外皮のコルク層をかきとり内皮を乾燥させて香辛料として使われているのがシナモンです。しかし、これらは採取する部位により少し異なる効能があります。

冷痛、月経痛、インポテンツなど

薬膳の効能は、温める作用が強く血行促進の働きがあるため冷えに悩む人に適しています。冷えで衰弱した体をあたため、冷えからくる痛み、下痢、月経痛、腹痛などを緩和します。

冷えからくるお腹の痛みには桂皮と生姜。腎機能の低下によるインポテンツや低血圧には桂皮と鶏肉のスープなどがおすすめです。

肉桂(ニッケイ)と桂皮(ケイヒ)呼び名の違い

採取する産地によって名前も変わるため、理解しずらい部分がありますが、「肉桂(ニッケイ)」はシナニッケイ(トンキンニッケイ)の樹皮をさし、若枝は「桂枝(ケイシ)」と呼びます。
「桂皮(ケイヒ)」はヤブニッケイ、ジャワニッケイの樹皮をさします。

肉桂(ニッケイ)と桂枝(ケイシ)の効能の違い

採取する部位が異なるため効能にも違いがあります。
肉桂は幹の樹皮のため、下行して体の深部、腹部周辺に働き補腎します。桂枝は高所の若枝部分のため、上行し体の表面、人の上部、頭部に働きます。

桂枝 シナニッケイの若枝 温めて発汗させる
肉桂 シナニッケイ(トンキンニッケイ)の樹皮 体の深部を温める
桂皮 ヤブニッケイ、ジャワニッケイの樹皮 腹部周辺を温める

桂枝(ケイシ)

若枝部分
辛甘/温
性味
心、肺、膀胱
帰経
散寒解表、温通経脈、通陽化気
効能
風寒邪気のカゼ、頭痛、悪寒発熱
適応

肉桂(ニッケイ)別名:牡桂、桂肉

樹皮
辛甘/熱
性味
腎、脾、心
帰経
補火助陽、散寒止痛、温経通脈
効能
腎陽虚証、冷え性、虚寒の胃痛、しもやけ
適応

桂皮(ケイヒ)

樹皮
辛甘/温
性味
脾、胃、肝
帰経
温中散寒、理気
効能
腰部を温める、瘀血による月経痛、産後の瘀血症状
適応

本草綱目

牡桂(桂枝):辛/温 治上気 咳逆 結気、喉痺、補中益気
久服すれば神に通じ、身を軽くし、老いず。治心痛、脇痛、脇風。

肉桂:甘辛/大熱 小毒、利肝肺気 治心腹寒熱、冷痰

シナモン、カシア、ニッキの風味

香辛料のシナモン、カシア、ニッキの産地と香りの違い

香辛料のシナモンは、ヨーロッパと東南アジアでは異なるニッケイ属の植物が使われていたようです。

ヨーロッパではスリランカの旧名であるセイロン産のセイロンニッケイの樹皮をシナモンと呼び慣わしていました。その風味はまさに優雅でセイロンの大地が育んだ香りが広がり、穏やかで甘く微細な香りがあります。

一方、東南アジアではシナニッケイの樹皮がカシアとして親しまれています。こちらは力強く東ヒマラヤ山脈の雄大な風景やベトナム南部の熱帯の息吹が宿り、シナモンよりも強烈な香りがありスパイシーで強い風味があります。
産地による違いが各地の香辛料の風味を独特のものにしています。

そして日本の温暖な地方で育ったシナニッケイの根から得られるニッキ。古くは八つ橋などのお菓子にも使われていたようです。ニッキがもたらす優しい香りと風味は、日本の四季折々の美しさを感じさせてくれます。

シナモン セイロンニッケイの樹皮 甘味と穏やかな香り
カシア シナニッケイの樹皮 甘味は薄く辛味が強い
ニッキ シナニッケイの根皮 爽やかな甘味と強い辛味